スーザン・クリンスキー: 失禁ケア臨床医、米国

母の予知というべきものは確かに存在します。母親は知っているのです。

「私の母は、私たちが自分について知らないことを知っているのです。」とスーは語ります。「しつこいようですが、母は知っているのです。母は、私が看護師になること、妹が教師になること、弟が成功を収めることを知っていました。母はこの 3 つの点で正しかったわけです。」

スーは、高校生のときにブロンクスのフォーダム病院で看護助師のボランティアとして働いたことがあります。人を世話することは、自分にとって第二の天性であると気づきました。彼女はまったく怖気づくことはありませんでした。彼女はボランティアとして患者に惜しみない親切を持って接し、言葉を交わし、歌を歌い、音楽を聴き、元気を与え、抱きしめ、友人となりました。彼女の母は正しかったのです。彼女は生まれながらの看護師でした。

「未来を予測する最も良い方法は未来を作り出すことです。」

自分を信じることが困難なときは、誰しも、自分を信じてくれる人が必要です。同情ではなく、励ましてくれる人。たゆまず意欲をかき立てる人。スーはそのような人です。彼女の自分の職業に対する熱意、専心、知識は彼女の価値観であるとともに彼女の性格を表すものです。

スーは 16 歳で学校を卒業し、1 年間待って (この間、彼女は自身の意思とは裏腹にウォール街で働いたことがあります) 看護大学への入学資格を得ました。彼女の正看護師としての最初の仕事は産婦人科で、19 歳のときでした。

「子供が欲しいと思っていたので、赤ちゃんについて知っておいたほうが良いと思ったのです。」

その後、彼女は小児科で勤務しました。「その頃私には 2 人の子供がいて、子供たちが病気になったときの看病の仕方を学ぶ必要がありました。」

スーは、テレメトリー、整形外科、救命救急診療、リハビリテーションなど、RN (正看護師) として身に付けられるあらゆる分野を事実上制覇しました。彼女は、フロリダ州サンライズの HealthSouth Sunrise Rehabilitation Hospital (ヘルスサウス サンライズ リハビリテーション病院) の CRRN (リハビリテーション認定看護師) として 23 年間勤務しています。

彼女が勤務する、施設内にある Day Rehab Gym (デイ リハビリ ジム) は活気に満ちています。理学療法士、作業療法士、言語療法士が、脳損傷、脊髄損傷、脳卒中などの医学的に複雑な神経学的問題を抱える患者に対応しています。ジムからは決意や気概が感じられ、小さな前進が日々積み重ねられているようです。ある男性は、療法士を伴い、唇を閉じ瞬きもせず何かに没頭しています。彼は、1 本の脚をもう片方の脚の前に振り出してもう一度歩く練習をしているのです。

ある少年は歩行訓練器にぶら下がって大きな鏡に顔を向け、ルームランナーの上を歩く自分の脚を見つめながら、歩いていたときの記憶を蘇らせようとしています。

「歩行は記憶とは関係のない、学習では確立されない行動ですが、視覚的および身体的な手掛かりを常時与えて記憶の引き金を引くことにより、歩き方の再学習を促すことができます。」

テーブルについている女性は、靴ひもを結ぶ練習をうまくやり遂げたので頭をのけぞらせて得意顔で手を叩いています。

2007 年、対麻痺を患うアレックスと四肢麻痺を患うジョンという 2 人の若い男性とともに、彼女は、脊髄損傷サポート グループ (SCISG) を立ち上げました。

「当事者の目線で取り組まなければ何事も達成することはできません。」

この 4 年間で、このグループは毎月 1 回の会合を開き、300 人以上のメンバーを集めました。

彼らの努力が実り、今では、南フロリダのマイアミ郡、フォートローダーデール郡、オカラ郡の 3 つの郡にサポート グループがあります。

スーが 14 歳で天職を見つけたのと同じように、このサポート グループに積極的に参加している人たちも、自分の心の声に従って人々の役に立とうとしています。ある細身の若い男性は、グループ内での自身の役割について自己紹介しながら、車椅子生活となったオートバイ事故について語ってくれました。「私は人間的に成長しました。」と、彼は言います。彼は自分の使命も知ることができたのです。

「我々は得ることで生計を立て、与えることで生きがいを作る。」— ウィンストン・チャーチル

SCISG のスーの仕事場は写真で一杯です。「それは、サポート グループの 12 人の仲間と 60 人の健常者のボランティアがグループの資金集めのためにタンデム ジャンプを開催したときの写真です。」写真に交じって、ヘルスサウス サンライズ リハビリテーション病院から表彰されたナショナル エンプロイー オブ ザ イヤーのトロフィーや 10 月を「脊髄損傷撲滅月間」と宣言したサンライズ市長から贈られた感謝状なども飾られています (ちなみに、市長は、スーが発起人となった独立車椅子バスケットボール チーム「サンライズ サンズ」の創設支援に尽力し、$2000 for a chair and rallying others to do the sameの寄付をしました)。また、小さなハンドルを押すと水が流れる音のするミニチュアのトイレが付いたキーリング、切り抜きや諺を書き留めた紙、贈り物が所せましと飾られています。机の上にはカナリアイエローを背景にしたヤシの木のシルエットの小さな絵が掛かっています。この絵はある患者から贈られたものです (「私から話し掛けられた人がストレスを感じたときは、しばらくの間、この絵を見てもらって深呼吸をしてもらいます。」)。また、積み重ねられたノートや書類、コンピュータ、予想に反して野放図に育っている開運竹の鉢もポツンと置かれています。

スーは、自ら進んで長時間働いています。ほとんどの週末も出勤しています。彼女の責任感のある姿勢は周りに広がり、患者にも伝わります。「思いやりとは、甘やかすことではありません。」と、彼女は淡々と口にします。「患者は、祈るだけでは回復できません。回復に向かって努力しなければならないのです。」彼女は一呼吸おいてからはっきりとこう言います。「彼らは、自ら望んで回復に向かって努力しなければなりません。」彼女は、微笑むといつも目が輝きます。スーの夢は、フロリダ州のブロワード郡に身体障害者人材研修センター (Disability Resource and Recreation Center) を開設することです。彼女の不屈の精神があれば、もう一つの夢もかなうことでしょう。

「彼女なしの人生は考えられません。」と語るのは、美しいとび色の髪を持ち、芯の強さを感じさせるフロリダ在住の女性、クリスティーンです。彼女が受けたひどい犯罪によって彼女の骨は砕かれ下半身不随となりましたが、彼女の精神を打ち砕くことはできませんでした。

「スーは私の英雄です。」と彼女は賞賛します。「そんなことないわ。」とスーが返します。「でも、そこまで言ってくれてありがとう。」